【コラム】舞台はアジア。物語の鍵を握るのは妖怪「No-Face」

ほまれ塾助っ人ライターのAです。

外出自粛のため自宅で映画を観ている方も多いかと思います。

先日に続いてジブリ映画をテーマにコラムを書かせていただいております。

                  

◆「No-Face」って何?

この作品は、邦画だけでなく洋画も含め、国内で公開された全ての映画の中で興行収入1位の超大作です。

「魔女の宅急便」の舞台は「第二次世界大戦を経験しなかったヨーロッパ」ですが、こちらはうって変わってアジアです。愛媛県の道後温泉もモデルとなっています。台湾のような雰囲気もあります。

主人公は「魔女の宅急便」のキキより3歳年下の10歳。一人も知り合いがいない世界へ迷い込み「ここで働かせてください!」と仕事を始め、成長していきます。この辺りは展開が似ていますね。

途中で出てくる仮面をかぶった妖怪を主人公が宿に入れてしまったことで、物語は大きく動き出します。

この妖怪の名前は英語圏では「No-Face」です。

「No-Face」って何のことでしょう?何を訳そうとしてこうなったんでしょう?

原文、つまり日本語では「カオナシ」です。

最後に「千」は自分の本当の名前「千尋」を取り戻し、元の世界に帰ります。

「千と千尋の神隠し」の世界から現代社会をのぞいてみましょう。

                    

◆存在を取り戻す

「カオナシ」には文字通り顔がありません。仮面をかぶっていて、その下にも顔は無く、表情も分かりません。

また、一応声は出ますが、はっきりとした言葉を発することはできません。ただし、自分以外の誰かを飲み込み、その人の声でなら話すことができます。

カオナシのこのような特徴は、現代人が自分の存在をうしないかけている様子を象徴的に表現していると言われています。宮崎駿監督は「全ての人の心の中にカオナシがいる」と話しています。

カオナシの行動をみていると、お金で解決できたりできなかったりとか、自分の思い通りにならないと暴れ出したりとか、いろいろなテーマが盛り込まれていますよね。カオナシに注目して改めて観てみるとおもしろいかもしれません。

カオナシの他にも、「坊」という巨大な赤ん坊の妖怪が出てきますが、このキャラクターは、子どものまま上手く成長できず年だけとって大人になってしまった人を表していると考えられます。あるいは、そうなりやすい現代社会の問題を映し出しているとも考えられます。

カオナシや坊が比喩的に表現しているテーマは、主人公の千尋やヒーローの「ハク」が自分の名前を取り戻すというストーリーと符合します(整合性がある・上手くつながる)。自分の存在を取り戻すのです。

私の個人的な感想で、若干深読みですが、「魔女の宅急便」が純粋なエンターテイメントの中でどこまでも美しく平和な世界を描いたのに対して、「千と千尋の神隠し」は、エンターテイメントの中に、現代に生きる人間の存在や寂しさや現代社会の問題を描いているように感じました。

ちなみに、「湯婆婆(ユバーバ)」と双子の姉「銭婆(ゼニーバ)」の名前の頭文字をつなげると「銭湯(セントウ)」になります。超大作にはこんなに深い(?)暗号が隠されているんですね。

コロナウイルスのパンデミックによって自宅で過ごす時間が長くなりますので、裏設定や象徴表現の多い映画も、単純明快な映画も、いろいろ観てみましょう。

                  

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